ナナハンとイチゴー対決!:珍品クルミノン vs 王道?ビオター

ナナハン。標準より少し長い75mm、マルチな中望遠。歪みが少なく、空間を切り取った撮影が楽しめる焦点距離。

イチゴー。f1.5、オールドレンズ好きには魅惑の響き。望遠と相まって被写界深度の浅さがレンズのクセを濃厚に感じさせてくれます。

 

その使いやすい焦点距離と、魅力的な明るい開放値の両方を備えたレンズ2本を撮り比べてみる機会に恵まれました。

どちらもドイツ製ですが、片方は天下のカール・ツァイス・イエナ製、もう片方はマイナーなシュタインハイル製(Steinheil)。

 

焦点距離、開放値も近いので、もしやと思い調べて見るとかなり似ているレンズ構成となっていることが分かりました。

両者ともに変形ダブルガウス型、4群6枚構成。構成図を見る限りでは、かなり似ている(ほぼ同じ)ことが分かり、驚かされます。

ちなみにレンズ構成図は、書籍「35mm判オールドレンズの最高峰 50mm f1.5 」の巻末に掲載されている図を参考にさせて頂きました。

 

そうなってくると、この焦点距離、この開放値のレンズにおいてどのような作画を求めるか?の差が現れるのではないかと想像してしまいます。

そんなことを考えながら、2つのレンズの撮り比べを行うことにしました。

使用機材は、ライカ SL typ601。アダプターを介して、三脚でカメラを固定をして絞り値を変えながら変化を追います。

 

まず絞り開放 f1.5。どちらも強烈なグルグル大回転な周辺の流れ、強力な後ボケでインパクトがあります。迷うこと無く日の丸構図で撮影するのが一番でしょう。

 

↓ クルミノン 75mm f1.5。ピント面にもフワリとした甘さが感じられます。光彩は、ビオターに比べても中心付近ではクッキリ、周辺寄りになるとかなり変形してインディカ米(?)のようになります。ちなみにフラッシュバックの近所にはルンビニ(コンビニじゃないよ!)というアジア系ゴハン屋があり、そこのビリヤニランチ(スパイス・お肉・インディカ米の炊き込みご飯)はオススメです。(Culminon 75mm f1.5 at f1.5)

 

↓ 次にツァイス・ビオター 75mm f1.5。f1.5から流石の安定感です。硝子瓶にピントを置いていますが、きっちりと結像しているのがよく分かります。周辺の光彩はレモン型。なお、上記ビリヤニランチにはレモンを掛けて食すのがオススメです。(Biotar 75mm f1.5 at f1.5)

 

↓ 次は一段絞ってf2です。クルミノン 75mmにて。コントラストが高まり、しっかりとしたピント描写ですね。周辺のインディカ光彩は健在です。(Culminon 75mm f1.5 at f2)

 

↓ ビオター 75mm、 f2にて。キリリとした写りに変化していますね。中心の光彩が僅かにカドがついてきました(10角形絞りのため)。周辺の光彩はちょっとカドが取れて、ぷりっとしてきました。クルミノンに比べると写り全体のバランスの良さを感じます。(Biotar 75mm f1.5 at f2)

 

↓ 続いて、3段絞ったf2.8。クルミノン 75mmにて。ミュンヘン生まれのこちらもかなりピント面の写りがしっかりとしてきました。解像感高く、望遠らしい端正な写りが味わえる…。、かと思いきや、周辺は相変わらず甘く、そしてしぶとくも強いグルグルが健在です。クルミノンの「クル」は、クルクルの「クル」なのでしょうか。(Culminon 75mm f1.5 at f2.8)

 

↓ こちらはイエナ生まれのビオター 75mm。f2.8となり、かなりまとまってきました。実に精緻な写りです。繰り返しますがサスガですね。光彩をみるとまだ少しグルグルの名残が感じられます。角形の絞り羽根形状のため少しカクカクしていますね。(Biotar 75mm f1.5 at f2.8)

 

↓ 4段絞ってf4。クルミノン 75mm。焦点距離を考えると使い頃の絞り値でしょうか。中央付近の写りとは対照的に、周辺はまだまだ盛大に流れます。周辺の光彩はインディカ米から我らがジャポニカ米へと変化しています。(Culminon 75mm f1.5 at f4)

 

↓ f4でビオター 75mm。かなりパリッとしてきました。少し固さを感じさせる写りです。かなり周辺も安定していますね。ほとんど同じようなレンズ構成であっても、その差は大きいですね。写真として正しい写りが得られるのはビオター。絞ってもクセが残る楽しさはクルミノン。(Biotar  75mm f1.5 at f4)

 

↓ 4段絞ってf5.6のクルミノン 75mm。ここまで来ると、しっかりとした安定した写りが得られます。しかし良く見ると周辺の流れはまだ感じられ、クルクル感が残るあたりが楽しいですね。(Culminon 75mm f1.5 at f5.6)

 

↓ ビオター 75mm。優等生ツァイスらしい4段絞ったf5.6の写りです。自然なボケ味が得られ、しっかりとした解像感とコントラストと相まって、気持ち良く抜けた写りが味わえます。クルミノンと比べると周辺の流れが少なく、実に端正な写りです。(Biotar 75mm f1.5 at f5.6)

以上、最後までお付き合いくださりありがとうございました。

また、面白そうなネタやこれまでに見たことの無い比較などに今後もトライしていきたいと思います。

【撮影地:流山おおたかの森】